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崗上虜囚の備忘録

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トリウム溶融塩炉

小型原子炉4S炉を述べたので、トリウム溶融塩炉についても少し述べる。

トリウム溶融塩炉の由縁は、燃料の原材料がトリウムであるからと、燃料を溶融塩に溶かし込んだ形で核反応を起させるからである。

トリウムは地球上に存在する物質の中でウランに次いで重い物質であり、ウランよりはるかに入手しやすい物質である。トリウム炉の燃料の原材料がトリウムと書いたが、トリウムのままでは燃料にならない。しかしトリウムに中性子を一個吸収させると、核分裂物質ウラン233になる。従って、トリウム炉と言うより、ウラン233炉と言うべきかも知れない。

また、原子炉に溶融塩を使う理由は幾つかある。塩は高温だと液体になり、非常に安定している物質である。水のように高温時に金属と反応することも無い。水のように高温時に水蒸気爆発を起こす危険も無い。

そして溶融塩を使うもう一つの理由が、トリウムからウラン233を作るときに副産物として出来るウラン232が強度のガンマ線を発生し、取り扱うのが困難だからである。しかし、ウラン233もウラン232も溶かし込んだ液体とすれば、遠隔操作が出来るので、取り扱いは容易になる。

トリウム溶融塩炉が、燃料棒でなく液体の燃料としたのはその為である。しかし溶融塩は水のように減速材としては使えない。このため、トリウム溶融塩炉では、液体の燃料を黒鉛反射体の間を通すことで、核分裂の連鎖反応の連鎖反応を起こさせる。

従って、黒鉛反射体の間でなければ核分裂は止まる。これと低温時には溶融塩が固体になる事を利用して、トリウム溶融塩炉を緊急停止させる場合は、燃料を炉の外に落とすことで停止させる。

その機構は、緊急弁の代わりに炉の底の溶融塩を強制冷却して固化させておき、電源喪失のような事態や、高温になりすぎた場合は固化した箇所が液化し、燃料が自動的に下のタンクに落ちることになる、フェールセーフ設計となっている。現在、使用する溶融塩はフッ化物溶融塩を想定しており、500度以下では安定なガラス固化する。

又、トリウム溶融塩炉が安全とうたっている最大の理由は、プルトニウムを生成しないことである。そしてトリウム溶融塩炉は、プルトニウムを一緒の燃やすことが出来、核廃棄物の量を減らす事が出来ると言うのも売りの一つである。

 

古川和男氏設計の標準小型溶融塩発電炉FUJI-Ⅱと実験炉ミニFUJIの断面図

 

 

小型溶融塩発電炉 FUJI 全体構成図

 


日本は、海水からウランを採取する方法を実用化している。しかしトリウムは海水に溶けにくいため、海から採取できない。従ってトリウム炉が実用化されてもトリウムは海外から買わなければならないのがネックである。

又、服部禎男氏発明の小型原子炉4S炉とトリウム溶融塩炉を比較すると、どちらも都市に設置することを念頭に置いているが、トリウム溶融塩炉は構造的にやや複雑である。当然コストも高くなる。

4S炉は使用されているナトリムが水と反応すると燃える性質の為、テロ攻撃の対象になる不安も無いではない。しかしトリウム炉の売りである『プルトニウムを生成しない』も、将来プルトニウムがそれ程問題にされることが無くなる可能性もある。従って、4S炉の方がやや有利であると思われる。

しかし、トリウム溶融塩炉の開発を支援したい理由が一つある。それはインドとの関係である。インドはトリウムの資源国である。インドの約半分の海岸では30万トンのトリウムが確認されている。例えば、インド南西のトランバンコール海岸は、30cm~1mの層を成し、直堀で採取できる。

そしてインドは多年に渡りトリウム炉の研究をしている。だが開発のネックのとなっているのは、トリウムからウラン233を生成する装置である。ウラン233を生成するには、高加速器で加速した陽子をトリウムに当てれば、容易に生成することが出来る。

当然インド人科学者は原理を分かっているが、インドは未だ発展途上国であり、底辺の技術が備わっていない。しかし日本は加速器程度なら直ぐ作れる。インドは親日的な国である。又日本と同様、支那の脅威に晒されている国である。

日本がトリウム炉の開発を通じて協力しあえば、自然な形で同盟関係に発展する筈である。インドとの同盟。それは拡張する支那に対して最大の抑止力になる。


   主なトリウム産出国(万トン)
   国名     確認資源量 推定追加資源量  合計
  ブラジル     60.6    70.  130.6
  トルコ       38.     50.   88.
  オーストラリア  30.      34.     64.
  米国        13.7     29.     43.2
  中国         38.8          38.8
  インド         36.             36.
  ベネゼラ       32.4            32.4

 


 

 


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