http://kojoryoshu83.edoblog.net/%E5%8E%9F%E7%99%BA%E6%8E%A8%E9%80%B2/%E7%99%BA%E3%82%92%E5%B7%A1%E3%82%8B%E4%B8%8D%E6%AF%9B%E3%81%AA%E8%AD%B0%E8%AB%96原発を巡る不毛な議論
【討論】福島の教訓と日本のエネルギー政策の行方[桜H25/4/13]
パネリスト:
小野章昌(元三井物産 原子燃料部長)
澤田哲生(東京工業大学助教)
高田純(札幌医科大学教授放射線防護学)
竹田恒泰(作家)
槌田敦(元名城大学教授)
野村旗守(ジャーナリスト)
林勉(前エネルギー問題に発言する会代表幹事・元原子炉メーカー技術者)
藤井石根(明治大学名誉教授・太陽光発電所ネットワーク代表理事)
司会:水島総
出席者顔ぶれを見て、あまり期待できないと思ったが、その通りであった。何故なら、原発問題を議論するには、どの程度の放射線が健康に被害があるかの共通認識が無いと、議論にならないからである。それが僅かの放射線でも健康に被害が有ると思っている人間とっては、原発廃止の結論しか無い。それなら、原発問題を語る以前に、放射線が健康に被害が有るか無いかの議論を始めるべきである。
処が竹田恒泰氏は「今日の議論は、低線量放射線の健康被害があるか無いかでは無い」と言い切る。甚だしきは、槌田敦氏は、原発推進派に放射線医学の専門家の高田純氏が居ること自体を問題にしている。また槌田氏は、討論番組を反対派、賛成派の勝ち負けの試合かのように思っているようである。つまり竹田氏や槌田氏の考え方は1か0、即ち原発廃止以外頭にないのである。
例えば、高田純氏が福島の放射線量が安全な値で、彼が測定した福島の人の放射線の値と、チェルノブイルと比較した例を示した処、槌田氏は『チェルノブイルと比較してどのような意味があると思っているのか?。反対派のほうに(放射線医学の専門家が)いないですよ』と噛み付き、そして竹田恒泰氏も『その数字が正しいとして、だから原発を稼動させる理由にはならない。現に原発関連死789人がある』と見せたのは、東京新聞の記事である。『原発に殺されたと恨みを持っている人がいる。放射線が大丈夫だといっても、家に帰れなくて苦しんでいるではないか、高田先生が100%正しくても、原発稼動の理由にならない』と言い出した。
変では無いか。若し高田氏の言っていることが正しければ、避難している福島県民は家に帰ることが出来、すべて解決するのである。処が竹田氏や槌田氏は、その矛盾さえ気が付かない。高田氏が言っている事が正しいのに、家に帰れない人がいるとするなら、放射線恐怖のデマを流布している人間がいるからではないか。
全く、この二人は何が問題であるか理解していない。原発問題の本質は放射線が人間に取ってどの程度危険かだけであり、討論番組の趣旨は、その危険のラインをクリアするには、どのような対策が可能か否かで有った筈である。放射線の危険の程度が低ければ、原発の安全基準も全て変わるのである。
議論が成立するのは、土台となる共通認識が必要である。この討論番組で言えば、共通認識が放射線の危険ラインである。若し原発推進派・容認派・反対派が議論をするにしても、お互いの放射線の危険ラインがが同じでなければ、議論は平行線を辿ることとなり、結果はそうなった
それでも竹田氏は、放射線医学の専門家でも、危険ラインが異なることは知っているようである。竹田氏も述べていたが、放射線の人体に与える影響については、専門家の間でも僅かでも危険とする考えと、むしろ低線量は体に良いとするホルミシス効果の考えとが有り、180度異なる意見が出ているのが現状である。
一般の人の議論が噛み合わないのはその為である。政府の原発再稼動の判断も、福島県民の帰宅の決断が出来ないのもその為である。それだけでは無い。専門家である筈の原子力規制委の極端と思える安全基準も、放射線医学の専門家による統一見解が出ていないからである。
でも不思議ではないか。広島の原爆から凡そ68年。広島の被爆者の追跡調査は事細かに行われ、核実験による生物試験も行われ、チェルノブイル事故の調査も行われた。原子力艦船を有する国々は、何れもそれにたずさわる作業員や兵士の厳重な管理も行われ、放射線が人体に与える影響についての、膨大なデータを有している筈である。処が今になっても放射線医学からの統一見解が出ていない。
確かに、ICRP(国際放射線防護委員会)の統一見解は有る。しかしそれさえ、人々は信用していない。未だ専門家の間で意見百出だからである。どうも原発と放射線の問題については、凡そ科学の世界にあるまじきことが行われているようである。誰かが嘘を付き、何かの理由で情報を捻じ曲げているとしか考えられない。
その誰かとは誰であろうIAEA(国際原子力機関)であり、放射線危険神話を流布しているのはICRPであり、それはIAEAの指示と思われる。放射線危険神話を作り出した理由は、IAEAの目的と合致しているからである。つまりIAEAは、世界の人に必要以上に放射線が危険と教育する理由が、あったと言うことである。勿論これは、私の推論である。
IAEAは国連の機関であるが、アメリカが主導した原子力を平和利用させる為の団体である。IAEAは原子力を平和利用の管理と共に、核兵器の拡散を防止させる目的も持っている。
では何故IAEAに、放射線危険神話を作り出す理由が有ったかと言えば、IAEAは核兵器を持たないと約束した国に、原子力発電の燃料供給と技術援助を行う機関である。確かに放射線は危険であるが、その防護と安全対策以外それ程難しい技術では無い。それが放射線がそれ程危険では無いと分かったら、独自に原発開発を行う国が現れ、核兵器の拡散を防止させるIAEAを作った意味が無くなってしまうのではないだろうか。
つまり放射線危険神話は、IAEAに繋ぎ止める武器だったということである。
そして、放射線危険神話の最初の綻びは、『低放射線は体に良い』とするラッキー論文を見て、アメリカ電力研究本部(EPRI)に噛み付いた服部禎男博士の騒動から始まった。
服部博士の疑義申し立てによりアメリカエネルギー省が動き、1985年にオークランドに世界中の科学者(約150人)が集まり国際会議が開かれた。結果はラッキー論文は正しい=低線量の放射線は体に良いであった。
この会議が放射線危険神話の最初の綻びと言うのは、オークランドに集まった世界中の科学者は、放射線医学のつんぼ桟敷に置かれた人たちであるが、自由な彼らにより、臭いものには蓋として閉じられていた蓋が開けれられてしまったからである。
当然、放射線危険神話は無くなる筈であった。処が1997年にセリビアで開かれた会議では、ICRP(国際放射線防護委員会)が反対した。放射線は少しでも有害である=放射線危険神話の蒸し返しである。何故ならICRPはイギリスのNPO団体であるが、IAEAが資金提供を行っており、放射線危険神話の本家本元だからである。
とは言えICRPも科学者の集まりの団体である。科学的論文は、別な科学者が追試験や別の角度から試験を行い、推論の正しさも精査するので、竹田氏が言うように只の統計学で決まるものでは無い。統計学で決まるのなら血液型性格判定だって科学論文になってしまう。
そのICRPがセリビア会議で、多くの実験結果を無視し、LNT仮説(しきい値なし直線仮説=0を基点として、がんの発生率は放射線の線量に比例する)を固持し続けていたのは、IAEAの最初の意向によるものだろう。
IAEAの最初の意向と書いたのは、福島原発事故によりIAEAの考え方が変わってきたのでは無いかと思われるからである。それは元IAEA顧問ジェームス・E・アワー氏の『日本よ原発に背を向けてならぬ』の発言と、同じくアワー氏の『米軍が、福島原発80km以内の米軍人に避難勧告をしたのと、立ち入らないようにしたのは恥ずかしいことだった』と言ったことである。
先に述べたように、米軍は広島・長崎の被ばく者の健康データも持っているし、原子力艦艇の燃料交換や、解体工事を行う作業者の健康管理を行っている。またラッキー論文から始まった騒動も知っている。当然、将官以上や空母艦長クラスなら、世間に流布されている放射線の危険性も、神話であることも知っていると思われる。アワー氏が、米軍の行動を恥ずかしいことだったと言ったのは、芝居が見えてしまった事だろう。
又、日本が原発から撤退することは、IAEAの方針を狂わすことと思われる。今やアメリカの原発の技術は日本なしには考えられない。当然、日本が抜けたIAEAは他国に技術指導を出来なくなる。各国は安全基準をないがしろにして、勝手な原発開発を行う。そして数々の事故が起き、何れ彼らは、放射線の危険性が、神話であることも知ることになるだろう。
即ち日本の原発撤退は、IAEA管理体制の崩壊と、核拡散の縛りが無くなることを、意味しているのである。思えば日本は、IAEAの従順な生徒であった。その日本が原発から撤退する可能性を見て、恐らくIAEAは混乱していると思われる。IAEAが混乱しているため、ICRPがLNT仮説を撤回するのは先の話かも知れない。
それでも放射線医学は科学の世界、何時までも世界の人を騙せるわけはない。放射線危険神話は何れ崩れる。従ってIAEAが取るべき道、否アメリカが取るべき道は、日本と共に新たな原子力技術を開発し、世界の指導的立場を維持する事ではないだろうか。東芝・日立等の日本の原発メーカの技術は、アメリカが育てたものである。
服部禎男博士の革新的な原子炉である4S炉も、アメリカの技術提供が有ったから生まれたものである。日本は恩義を忘れる国ではない。TPPなどよりも、日本はとアメリカは、協力すべき分野が一杯ある。原子力はその一つである。その為には、放射線危険神話の撤回が、真っ先に必要である。放射線医学の分野でも、日米が協力出来ることは一杯ある筈である。
と言っても、日本はICRPがLNT仮説を撤回するのを待ってはいられない。原発再稼動無くして、経済の復活はありえない。始めから放射線は僅かでも危険、と妄信している人間との議論は不毛に終わる。それなら世界の放射線医学に関する一級の科学者達を招待して、日本で国際会議を開くべきだろう。例え議論百出しようと、その中から政治家が責任を持って選択すれば良いのである。
イラン、ラムサールの放射線量=平均で日本の約20倍(≒1μSv/h、2011年8月の福島避難地域の放射線量≒1.3μSv/h)。多いところで5000倍(≒250μSv/h)。2011年4月10日の福島原発第一の正門付近の放射線量≒3.5μSv/h。1960年から1980年の日本各地の放射線量は、現在の1万倍から100倍(≒500~5μSv/h、≒4380~43.8 mSv/年)。活性酸素がDNAに与える損傷は、自然放射線の1000万倍。